02

PROJECT プロジェクトを知る

PROJECT.02

0から創った
スキームが、
大きな翼に。

スキームとは、体系化した仕組みを指すビジネス用語だ。
2016年、今後の成長が見込まれる航空産業に本格参入を果たした岡谷鋼機。
そこで売った商材は、鉄鋼ではなく、設備でもなく、「仕組み」そのものだった。
やがて、50人以上が関わることにもなる一大プロジェクトのパイオニアは
持ち前の好奇心と行動力を武器に、トライ&エラーを繰り返した一人の社員。
0からの挑戦の軌跡、それは岡谷鋼機のあるべき姿に重なっている。

PROFILE

KOTA
HIGUCHI

樋口 康太

2011年入社
名古屋本店 メカトロ本部

商学部出身。入社後メカトロ本部に配属され、工業炉を中心とした設備の営業を担当する。2015年頃より、航空産業への参入を模索。翌年、受注と同時期に発足したプロジェクトのメンバーとして活躍する。プロジェクトは、社内の表彰制度「最適調達パートナー」で大賞を受賞した。趣味はトライアスロン。大会出場経験も多数。

EPISODE.01

航空産業参入への
高すぎる壁。

航空産業を相手に何百億という取引実績を残したプロジェクトは、当時入社5年目だった樋口が足がかりを作った。樋口が所属するメカトロ本部は、大手自動車メーカーをはじめとした、ものつくり企業に向けて、機械設備の提案や販売を行う部署。多様な商材を扱い、お客様もさまざまな分野に渡ることが特徴だ。メカトロ本部の営業は、商材もお客様も自ら開拓し、付加価値をつけてビジネスを仕掛けていく。樋口もそんなスタイルを得意とする若手営業社員の一人だった。
新規顧客の開拓にあたっては、成長業界にフォーカスするのが当然のセオリー。なかでも樋口自身は、より知的好奇心をくすぐられる領域、例えば科学技術に触れられるような分野に切り込みたいと漠然と考えていた。そこで狙いを定めたのが航空産業。設備を売る部署に所属しているのだから、最初は当然、航空業界のお客様に設備を売ろうと考えた。設備に関する知識ならそれなりに詳しいと、自負もあった。意気揚々と売り込みをかけた樋口だったが、想定外の高い壁に阻まれることとなる。
航空産業は、現在では日本製の設備も多数採用されているが、一部の特殊工程では欧米製の設備が多く使われている業界。メーカーの変更や工程の変更に対するアレルギーもあった。それ以上に苦労したのが、認証の壁だ。航空機の製造現場では、決められた材料を、どの作業員がどのようなフローで製造するか、工程そのものが厳格に管理される。一度認証されたら、定められた通りに製造しなければならない。効率的な良い方法があっても、適用されることが難しい特殊な世界だった。
樋口が孤軍奮闘していた2015年は、ちょうど航空産業にも規制緩和の波が押し寄せていた頃。生産能力拡大にシフトしつつあり、手作業のような従来のやり方では、需要の高まりに対応しきれないだろうという読みもあった。いつ需要と供給のバランスにひずみが起きて、どこにチャンスが生まれるか、樋口はその見極めに悩んでいた。

EPISODE.02

できることを
考え抜いて
探し当てた商機。

航空産業に果敢に挑戦したものの、設備で新規参入するチャンスはなかなか訪れなかった。それでも諦めず、何度もトライ&エラーを繰り返した樋口。打ちのめされた日々のなかで、岡谷鋼機が本当に役に立てる領域は何だろうと考え抜いた。
比較対象にしたのは自動車産業。自動車メーカーには、ボディや電装用品などを納品する一次請けの部品メーカーがいる。その部品メーカーへ部品を納品する、二次請け三次請けメーカーもいる。ピラミッド型のサプライチェーンが出来上がっているのだ。一方、航空産業の場合は厳格な認証があるために、部品の工程ごとに航空機メーカーと外注先の間でやりとりを繰り返すことが多い。まるでノコギリの刃のように、ギザギザと取引されることから「ノコギリ発注」とも呼ばれている。これでは非効率極まりない。何よりも一番大変なのは、管理者だ。何とかならないだろうか?たどり着いた答えは、工程をとりまとめるビジネスをすること、つまりスキームの構築だった。
時を同じくして、別案件として東京の材料部門でも航空機産業に向けた取り組みが進められていた。出荷を控えた航空機にとって、機体の表面を守る為の表面処理やその後の検査工程がボトルネックとなっているという仮説を立て、岡谷鋼機なら材料の調達から加工、表面処理、その後の検査工程までワンストップで管理できるということを提案していた。残念ながら受注には至らなかったが、ここでの客先の接点が樋口のプロジェクトにおいて航空業界へ参入する為の重要な接点となっているのである。
樋口は、先輩社員にコンタクトを取る。部署も専門も違うが、お互い航空産業に参入したいという熱意を持っていた。先輩が持つ多くの情報やノウハウを教えてもらい、航空エンジンの製造において、0からサプライチェーンを作るという構想が徐々に形になり始めてきた。

EPISODE.03

信頼できる
パートナーと
手を携えて総合力を
高める。

情報収集には多くの時間を費やした。それこそインターネットで展開されている情報を、すべて吸収するほどの勢いで勉強したと樋口は笑う。フランスで開催された「エアロマート」という航空宇宙分野の国際展示商談会に出展した際は、ロールプレイをしたり、英語を勉強したり、綿密に準備をした。いざ商談を進めようとしたときには、当時の上司と相談しながら、仕組みや売上予測等の設定をしていった。役員たち上層部と交渉する際も、その上司がクッション役となってサポートしてくれたと言う。
2016年、初受注。ビジネスポイントは、「仕組み」をつくったことであり、それがお客様にとって本当に価値のあるものとして機能したことだ。売り込んだ仕組みは3つ。物流の仕組みは海外の現地法人とタッグを組み、在庫管理体制やクレーム管理体制を構築。また、金融面においては、租税還付体制を整えた。ITでは受発注管理など合計で9つのシステムを導入した。なかでもITにおいては、グループ会社の岡谷システムが作ったソフトウエアが高い評価を受けた。競合他社から「こんなシステムは作れない」と言われるほど、お客様の使い勝手がいいよう徹底的にカスタマイズ。これが高付加価値となった。
一方で肝を冷やした経験もある。大規模なシステム障害が発生し、お客様に迷惑をかけてしまったのだ。樋口がお客様と対応策を練っている間に、岡谷システムが即時対応し、なんとか復旧。グループ会社ゆえ、サーバーなどを流用できたことも大きかった。
航空エンジンメーカー、アメリカの重工業メーカー、素材メーカー、加工メーカー、海運貨物取扱業者、倉庫管理会社など、社内外から50人以上が関わり、全世界に仕入先を持つプロジェクトは岡谷鋼機でも類を見ないものだった。2018年には、1件目の3倍もの取引額を持つ大型受注を果たし、社内での注目度も格段にアップした。
「ものつくりに貢献するグローバル最適調達パートナー」として岡谷鋼機はどんな存在であるべきか、改めて樋口は考えている。現場の状況が好転するかどうかの視点が、きっと、その答えを導く鍵になるのだろう。

PROJECT.02

0から創った
スキームが、
大きな翼に。